「おや、玉太郎君かい。どうしたんだ」とむこうから声をかけた。
 玉太郎は、そばへかけよると自分の寝台の下からポチが見えなくなって、どこやらで、いやなほえ方をしていることを手みじかに語った。
「ふーン、なるほど。僕もポチの声で目がさめたんだ。この戸口の外でへんな声でほえるもんだから。僕はベットの上からしかった。しかし泣きやまないから、今下へおりて、この戸をあけたわけだが……ポチの姿は見えないね。どこへいったろう」
 そういっているとき、またもやポチの声が遠くで聞えた。いよいよ苦しそうなほえ方であった。それはどうやら甲板の上らしい。
「あっ、甲板へ行ってほえていますよ」
「うむ。どうしたというんだろう。幽霊をおっかけているわけでもあるまいが、とにかく何か変ったことがあるに違いない。行ってみよう」
 そのとき、ポチはまたもや、いやな声でほえた。
 それを聞くと玉太郎はたまらなくなって、かけだした。そしてひとりで甲板へ……。
 甲板は、まっくらだった。
「ポチ。……ポチ」玉太郎は、犬の名をよんだ。

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